エンドロールの先でも君を恋うから

ずっと避けていた場所は、案外すんなりと足を踏み入れられた。



必要以上に心配している由良くんの隣は、私が思っているよりも落ち着く場所になっていたらしい。



チャイムを押してから数秒、「はい」の一言はずっと聞きたかった優羽のお母さんの声。



とん、と大きい手が優しく背中を押すから、私は深呼吸のあとゆっくり言葉を並べた。



「...あの!わ、私...桜名や」


「弥衣ちゃん...!?」



家の中からよくわからない音が響く。なんだか痛そうな音やらなにかが落ちるような音に由良くんと顔を見合わせた。



そういえば優羽のお母さん、ちょこっと抜けてたな。



鍵の開く音に胸が鳴る。まっすぐ前を向くのは、こんなにも難しかったんだ。



前を向いたと思っていた三ヶ月は、斜め下くらいでしかなかったのかもしれない。



「弥衣ちゃん」


「...あずささん」



優羽の母、あずささんの手は私よりも震えていた。抱きしめてくれるぬくもりが優羽と似ていて、涙が溢れて止まらない。



「頑張ったんだね。きっと私に見えないところでたくさん泣いてきたんだよね。ありがとう、優羽に会いに来てくれて」
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