エンドロールの先でも君を恋うから
さっきまでの殺伐としたと表してもいいオーラが頭から抜けきれない。うん、と声を出す代わりに小さく頷いたのもそのせい。
初めての観戦だからと要るもの要らないもの関係なく入れた結果、学校に行くよりも大きくなってしまったリュックに手を伸ばした。
学校の指定ジャージじゃない、バスケ部のジャージを纏った由良くん。
黒のジャージに赤いラインが入ったもので、由良くんによく似合っていた。いや、由良くんならどんな色でも形でも似合うのかも。
体育館のステージの上でノートを広げると、由良くんは食い入るようそれに近づく。
その動きで、隣からシトラスのような匂いがふわりと香った。まだ少し彼に対しての距離感が掴めていないからか、心臓が大げさに胸の縁を叩く。
「桜名さん?読んだ?」
由良くんの背中をじっと見ていた私に、振り返って怪訝そうな顔をする。
ジャージでも由良くんでもなく、匂いで彼を見ていたとわかれば、さすがにいい顔はしないだろう。
今読むね、となんともないように自然逸らしノートへと視線を逃がした。