エンドロールの先でも君を恋うから
可愛いって……
優羽は照れもせずにこういうこと言うから、受け取った私だけが真っ赤になるのが日常だった。
脚本でこういうこと沢山書くから慣れちゃったのかな、なんて言い聞かせていたけれど。
でもこれ、傍から見れば、惚気けって呼ぶのでは。
「惚気け」
「ご、ごめんなさい」
謝られるとは思っていなかったかのような驚いた表情を顔に貼り付ける。
あ...違う。謝るところじゃなかった。
彼の周りで私のような人間は少ない。わかってる。
私たちは対極にいるはずだったから。
やっぱり由良くんとは合わないかもしれない。そう思うと何故か心の奥がどんより暗くて重くて、冷えてしまいそうだった。
「桜名さん...」
「誰かいんのかー?」
由良くんの私を呼ぶ声は、体育館に響いた威圧感のある声にかき消された。
手を引かれたかと思ったらステージ脇の緞帳(どんちょう)に包まれる。
「ゆらく…」
人差し指を唇に置いて、静かに、と彼が伝える。同時に由良くんの体温高めな手に塞がれてから十秒くらい。
足音が遠ざかるのが分かるとその手は私の口元から離れた。