エンドロールの先でも君を恋うから
「こっちきなよ」
故意じゃなく落ちるなら好都合です。
なんて口を開きかけたけれど、それが声になることは無かった。
初対面の人にそんなこと言えるはずがない。
「ねえ」
「…はい?」
「飛び降りようとしてた?」
なにか不味いことを言ったのではないか、上と下の唇を空気すらも入らないぐらいに固く結んだ。
…さっきの、口に出したわけじゃないよね?
誰だってこの状況を見たらそう思うのかもしれない。屋上の最果てであるこの柵に手をかけ、しかも涙の痕があれば、勘違いするのも頷ける。
だけど、この短時間でそう考えられるはずもなく、私は必要以上に焦ってしまった。
「あ、あの!そんなことは……ごめんなさい」
この三週間、冷静かつ平常でいられたことは一瞬たりとも無かった。
それが影響したのかもしれない。
謝ったら肯定してるみたいだ、と気づいたのは深々と頭を下げ切ったところだった。
屋上で飛び降りようとしていた、なんて広まったら別の意味で生きていけないような気がする。
「桜名(さくらな)さん、話、聞こうか。
今日部活無いから暇つぶしに来たんだよね。ここで会ったのも何かの縁かもしれないし」
話を聞いてくれる。それよりも先に名前を覚えられていることに驚いた。