総長様は極甘な妄想を止められない
「おい、どうした?」
笑顔のまま涙をぽろぽろ流して
体を震わせて。
「彩芽ちゃんを不安にさせたくなくて
笑顔でいたんですけど……
ほんとは怖くて怖くて
たまらなくて……」
「……」
「もう大丈夫だってわかってるのに……
体の震えがとまらないんです……」
そりゃあ、怖かったよなぁ。
暴走族の男3人に
女一人で立ち向かうなんて。
自分だって拉致られて
知らない場所に連れ去られるかも
しれなかったんだから。
俺はこの時、言えなかった。
『仲間の大事な人を
守ってくれてありがとう』
そんな、感謝の気持ちも
『他人を必死で守ろうとした
オマエの強さと優しさに、俺は惚れた』
人生で初めて芽生えた、甘い恋心も。