うちら絶対前世でつながっていたよね。ほんと、大好きだよ。だけどごめん。ほんとに、ごめん。
10/10
「おはよー!」
最終日、この日も優依からのラインで始まった。
て言っても、
私は、朝6時にはホテル近くの温泉に入りに行っていたんだけど。
温泉は大好き。
特に、朝一番の露天風呂は最高。
この日は、小雨が降っていた。
雨に打たれながら露天風呂につかり、私はいろんなことを考えていた。
優依への気持ちの整理がついていない。
いくら考えても、結論という結論は出なかった。
優依への気持ちは、『大好き』だ。
それは、変わらない。
でも、
その気持ちをどう処理していいかわからなかった。
温泉からホテルまで歩いていると、優依から「温泉は行ったん?」と、ラインが来た。
「行ったよ!最高やった!」
と答えると、
「一人で?」と、すぐに返信があった。
「うん!」
と返したが、ほんとは
「会いたかった。」と、言いたかった。
ホテルをチェックアウトすると、約束の時間とおり、優依が迎えに来てくれた。
助手席には、またしても姉ちゃんの姿。
( ̄ヘ ̄)
『姉ちゃん、助手席かわりい。』
と言いたい気持ちをおさえ、「ありがとう〜!」と言いながら、後部座席に乗り込む。
空港に向かいながら、優依と姉ちゃんがなにか話していて、車はなぜか通り道にあるショッピングモールに向かった。
駐車場に車をとめると、優依はズカズカと歩きすすめながら、姉ちゃんに「アンクレットほしいねんなあ。」と話しかけていた。
『ん???(・_・;)』と思った。
おそろいでほしいと言っていたアンクレットのことだと、すぐにわかった。
そういえば、一緒にいる間にいいアンクレットは見つからず、結局通販で探す話を優依としていた。
今日探すとか、聞いていない。
私に声をかけることなく、一人で歩き出す優依。
いろんなお店を見て回ったけど、結局いいアンクレットは見つからず、空港へ向かうことになった。
帰りは、飛行機。
空港に近づくにつれて、沈黙が増える。
その間、優依は終始爆音で失恋ソングを流していた。
最初笑いそうになってたけど、しばらく聞いていたら感情移入して泣きそうになってきた。
もうすぐ離ればなれになると思うと、寂しさが込み上げてくる。
一人で泣きそうになっているとバレたくなかったため、「やば、眠くなってきたー。」と嘘をつき、目を閉じた。
ぜんぜん眠くなんてなかったのに。
目を開くと、涙が落ちてきそうな気がした。
空港につき、優依が車をとめる。
一生、到着してほしくなかった。
ずっと、このままでいたかった。
まだ一緒にいたいと駄々をこねたい気分だったけど、優依の姉ちゃんもいたし、よっちゃんもいたし、外に出ないといけない雰囲気を感じた。
優依が車から降りてくれるかわからなかったため、思わず後部座席から運転席にいる優依の腕を引っ張った。
離れたくない思いが強すぎた。
優依は何か感じたのか、車から降り、私を強く抱きしめてくれた。
また泣きそうになる。
空港の中に入りたそうなよっちゃんの目線が気になり、優依の腕から離れるが、寂しすぎて歩き出すことができず、優依の手を強く握りしめた。
するとまた、優依が抱きしめてくれた。
結局、何回ハグと握手を繰り返したんだろう。
『これ以上は、まじで一生離れられなくなる』
これが最後だと強く決意し、優依の力強さを感じながら抱きあったあと、歩き出そうと決めた。
歩き出す瞬間、
優依が「写真撮ろーや!」と言って、自分のスマホを取り出してくれた。
初めてのツーショット。
嬉しさと寂しさで、また涙が込み上げてくる。
哀しい別れにしたくないと思い、涙を我慢した。
だけど、
涙を我慢して笑顔をつくろうと思えば思うほど、おかしな表情になっていることが、自分でもわかった。
優依との念願のツーショットは、このときの私の感情を十分に映し出してくれた。
とびきりの優依の笑顔に、泣くのをこらえて必死に笑顔をとりつくろうとしている私。
誰が見ても変な顔だ。
恥ずかしすぎて、今では見返すことができない。
せっかく、優依とのツーショットが撮れたのにな。
いい表情でバシッとキメたかった。
泣きそうな感情をおさえ、仕方なくよっちゃんと歩き出すと、姿が見えなくなるまで優依はとびきりの笑顔で両手を振ってくれた。
私も姿が見えなくなるまで、手を振り返す。
いよいよ、2人の姿は見えなくなった。
私は寂しさを紛らわすため、わざと明るくよっちゃんに話しかけた。
「な、たこ焼き食べよーや!」
冗談を言い合ったり、いつも以上に明るく振る舞う。
いざ、飛行機に乗り込むと、飛び立つ瞬間、こらえていた想いが一気に溢れ出してきた。
大粒の涙が頬をつたう。
目を閉じるが、涙はとめどなく流れてきた。
ハンカチで顔をおおう。
隣のよっちゃんを見ると、雑誌を広げていて私の様子に気がついていないようだった。
この瞬間、
優依への気持ちが確信的なものになったと感じた。
ただの友だちとの別れなら、こんな気持ちにはならない。
それ以上の気持ちがあるからこそ、この涙なんだ、と思った。
そのあとも、ずっと優依のことを考えていた。
着陸すると、すぐに優依の姉ちゃんから着信があった。
予想外だった。
優依は、昨日から自分のスマホが使えなくなっていた。
おそらく、通信障害。
そのとき、
念のためにと、優依の姉ちゃんと連絡先を交換していた。
優依に何かあったと思い、急いでかけなおす。
「今ね、ユウがかけてたんよ。待ってよ、今代わるから。」
と言われ、すぐに優依に代わった。
優依は電話を代わるとすぐに、心配そうな声で「大丈夫?無事ついた?」と聞いてくれた。
嬉しかった。
優依に何かあったと思って心配したけど、優依も私のことを心配していたことを知り、嬉しくてまた涙が落ちそうになる。
空港で見送って終わりではなく、ちゃんと無事に到着するまで心配して連絡をくれたことが、ほんとにほんとに嬉しかった。
優依は、スマホを修理に出したようで、「今日の夜には、ラインできるはず。」と言い、家についたらまた連絡をする約束をして、電話を終えた。
よっちゃんと荷物を受け取り、出口に向かう。
空港の到着ロビーには、私の夫が迎えに来てくれていた。
複雑な気分だった。
嬉しいはずなのに、なぜか心から喜べない。
哀しい気分だった。
自分でも最低だと思うけど、頭の中はこのとき優依のことでいっぱいだった。
夫とは少しドライブをして、ご飯を食べ、帰路についた。
その夜、
約束していたとおり、優依からラインが届いた。
スマホを買い替えたみたいだった。
優依からの連絡は、とっても嬉しかった。
何回か会話をしたあと、「おやすみ!」と言い合った。
いつもならそれで会話は終わるが、この日は違った。
「おやすみ!」と言い合ったあと、優依が通販で探したアンクレットの写真を何枚か送ってきてくれた。
優依がおそろいのアンクレットを一生懸命探していたのが伝わった。
何枚か候補の写真が送られたあと、「これ良くない?」と優依が一つのアンクレットをピックアップした。
「俺黒で、みーちゃん赤ね!」
「みーちゃんも似合うと思う!かっこいいし、かわいいし!」
こんな感じで、おそろいのアンクレットを買うことが決まった。
同じサイトから、別々に購入した。
た、楽しみすぎる。
届いたら毎日つけよ!って思った。
お互いに買ったのを確認してから、改めて「おやすみ!」と、言い合った。
幸せすぎる瞬間。
優依、すでに会いたい。