プリザーブドLOVE  ~けっして枯れない愛を貴女に~
 吸い込んだ煙を思い切って吐き出す。

 煙にまみれながら、ふと、何故だか昼間に会った田所優の顔が浮かんできた。

 帰り際に見せた、あの誠実を絵に描いたような笑顔を。

 もし……
 あのぐらいの年齢のときに彼のような男と出会っていたら、今、どんな日々を過ごしていたんだろう。

 きっとまるで違う人生だったはず。

 もう、子どものひとりやふたりはいたかもしれない……

 やだ。何、バカなこと考えてるんだろう。
 そんなことを想像してたところで、なんの意味もないのに。

 わたしはぼんやり浮かんできたその思いを、即座に頭から追いやった。
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