花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません
首を傾げながら自分の記憶にある研究員のデータと照合させる。
「岡本さ……ん?」
ボサボサ頭に黒縁メガネ、ヨレヨレのスーツを着ているその男性は岡本蓮といううちの研究員。
岡本さんはうちのがん治療薬プロジェクトのサブリーダーなのだけれど、私とラボにいる時間が被らず、同じチームなのに顔を合わせることはほとんどない。
おまけに彼の存在が他の研究員と比べると影のように薄く、そばにいたとしてもあまり気に留めることがなくて、まともに目を合わせて話したのも同じチームになって挨拶して以来かもしれない。
だから、顔を見てもすぐにわからなかった。
百八十五センチくらいの長身で一見ガリガリに見えるのだが、今こうして彼の腕の中にいると思いのほか身体ががっしりしていて驚いた。
スポーツ、なにかやってるのかな?
それにスミレの花のような爽やかで甘い匂いがする。
すごくいい匂い。
コロンでもつけてる?
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