花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません
私がそんな話をすると、蓮は優しい目で微笑んだ。
「この桜、初代社長だったじいさんの家の庭にあったものをここに移し替えたんだ。愛でてくれる人がいて、じいさんも喜んでると思う」
「蓮はどうして研究員になっんですか?」
「うちのじいさんも研究員だった。うちの風邪薬の開発者でね。俺もじいさんみたいに薬を開発したくなったんだ」
おじいさんの話をする彼の目はとても温かい。きっとおじいさんのことが大好きだったのだろう。
「そういうの素敵ですね」
「人の運命ってわからないな。突然社長になってい気が重かったけど、花音とこうして話すようになって前向きになれた」
「そんな……私なんてなにもしてない」
「この桜みたいに、そばにいてくれるだけで心が癒やされるよ」
蓮が私を見つめて甘く微笑する。
その時風が吹いて花びら散った。
ひらひらと花びらが舞う中、蓮が乱れた髪をかき上げる。
その姿があまりに綺麗で見入ってしまうが、少し酔っていたせいか足がもつれて転びそうになった。
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