花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません
6,彼女の従兄はお人好し ー蓮side
花音とステーキハウスを出て、マンションに向かう。
途中研究所の前を通ったら、彼女が立ち止まった。
「もう咲いてたんだ……って、四月ですもんね」
花音が見ているのは満開の枝垂れ桜。
研究所のライトに照らされ、昼間とは違った幻想的な姿を見せている。
「俺も桜のことなんて忘れてたな」
先月兄が亡くなってから怒涛の日々で、景色を見る余裕なんてなかった。
いつの間にかこんなに綺麗に咲いていたんだな。
この枝垂れ桜は祖父のお気に入りだった。
桜の木を眺めてフッと微笑する。
「桜見ると疲れを忘れますよね。この枝垂れ桜、私のお気に入りなんです。昔家がこの近くにあって、小中高とこの桜を見て登校して……。実は一二三の志望動機のひとつがこの桜を見るためで」
花音の話を聞いて嬉しくなった。
「この桜、じいさんの家の庭にあったものをここに移し替えたんだ。愛でてくれる人がいて、じいさんも喜んでると思う」
< 115 / 251 >

この作品をシェア

pagetop