花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません
悲痛な声で言われ、わけがわからず固まる俺。
酒に酔ってて記憶が混乱しているのか?
花音を観察しながらじっとしていると、彼女は俺に懇願する。
「お父さん、お母さん……どうして私を置いて逝っちゃったの?」
彼女の両親はもういないのだろうか?
そういえば、今日会った従兄の家に十八歳の時からご厄介になったとか言っていたような気がする。
最近、義兄を失った俺には花音の悲しみがなんとなくわかった。
俺が尊敬する義理の祖父がこの世を去った時、初めて孤独を感じた。
頭で死んだことを理解していても、心はそうじゃない。
会いたくても会えない辛さ。
もうこの世に存在しない。
そのことを思い知らされて絶望するのだ。
自分だけ置いていかれたような気持ちがする。
「会いたい……よ」
花音は悔しそうに言ってギュッと俺のシャツを掴む。
「ここにいるよ」
彼女を抱きしめて優しく声をかける。
夢の中でもいい。
花音が両親に会えますようにーー。
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