花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません
もし俺なら気に入らない相手にそんな話はしない。彼はお人好しすぎる。
「それは花音が一二三の社員だからだ。簡単に買収なんかされるなよ」
神宮司がぶっきら棒に答えるが、その言葉には彼の優しさが滲み出ていた。
「俺へのエールと受け取っておきますよ」
なんだか心があったかくなる。
そういうところ、花音と似ているな。
「俺より年下なのにその余裕顔、気に入らない」
神宮司が顔をしかめて不服そうな顔をするが、俺はニコッと笑って返した。
「最高の褒め言葉ですね」
その後はコース料理を食べながら、学生時代の花音の話でなぜか盛り上がる俺たち。
「見ろ、この成人式の写真。花音の振り袖姿かわいいだろ?」
神宮司がスマホで花音の写真を自慢気に見せてきて、彼に頼んだ。
「すごく綺麗だ。その写真、俺に送ってくれませんか?」
真っ赤な振り袖を着ている花音はとても艶やかで美しい。
「ダメに決まってるだろう。かわいさが減る」
自分から見せたくせにスマホを引っ込める彼。
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