花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません
「そうなんですよ。じゃあ」
ハハッと笑うと、田辺君はマイクを引きずって部長室に入っていく。
「変な田辺君」
部長室のドアを見据えてポツリと呟き、バッグを持ってオフィスを出る。
雨がポツポツ降り出していて、小走りで正門を出ると、目の前にいた人に傘を差し出された。
前も見ずに走ったから相手の顔はわからないが、数日前にも似たようなことがあって、てっきり蓮かと思って顔を上げたが違った。
目の前にいたのは歓送会の日に会った金髪の外国人男性。
「風邪を引くぞ。藤森花音」
その男性が私を見つめてフッと笑みを浮かべた。
「なぜ私の名前を?」
名乗った覚えはない。
少し警戒しながら尋ねると、彼は「君のおじいさんに聞いたんだ」と答えた。
おじいちゃんに?
おじいちゃんがなんの意図もなく私の名前を教えるわけがない。
この人は何者?
彼からはなんというか只者ではない空気を感じる。
「あなたは誰?」
私の問いに彼はどこか楽しげに目を光らせながら告げた。
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