花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません
きっとひとりで家にいたら、ずっと引きこもっていたに違いない。
身体の疲れを取るためとか理由をつけて家でゴロゴロしていただろう。
自転車を停めると、ネモフィラが咲き乱れる丘を蓮と歩いた。
「花音、こっち向いて」
蓮の声に反応して目を向けると、彼がスマホで写真を撮った。
「おっ、キレイに写ってる」
スマホの画面を見て写真を確認する彼に顔を近づける。
「本当ですか……あっ、すごくキレイ。ネモフィラ」
「花音もキレイだよ」
蓮が照れもせずそんな褒め言葉を口にするので、思わず上目遣いに見てしまった。
「一之瀬さんと同じような褒め方してますよ。誰にでも言ってませんか?」
「心外だな。直也は誰にでも言うけど、俺は花音にしか言わないよ」
クールな顔で返されても、その言葉を鵜呑みにはできない。
この人、無自覚の女たらしかも。
自分がどれだけ美形で、自分の言葉にどれだけの影響力があるか理解していない。
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