花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません
悪戯っぽく目を光らせて尋ねる彼に少し顔が熱くなるのを感じながら言い返した。
「聞かなくていいです」
「もうすっかり恋する乙女って顔ですよねえ」
「田辺君、もうからかわないでよ!」
恥ずかしくて彼の背中をバンバン叩きながら文句を言った。
「すみません。花音先輩がすごく嬉しそうだからいじり甲斐があるなって……ははは。あっ、ひょっとしてあの黒塗りの車ですか?なんか運転手さん降りてきましたけど、藤森さんて本当にお嬢なんですね」
田辺君が正門前に停まっている車を指差す。
「私は庶民なんだけど、おじいちゃんがちょっとお金持ちでね。じゃあ」
田辺君と門の前で別れると、運転手さんが私を見て車の後部座席のドアを開けた。
「ありがとうございます」と礼を言って車に乗り込むと、祖父が座っていた。
車内が暗いせいだろうか。
先週会ったときよりもほっそりしているように見えた。
祖父ももう八十五歳。
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