花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません

その後ふたりが玄関に入ったところを見届けると、屋敷の中が慌ただしくなった。
部屋の中に戻ろうとしたら、ラドクリフが少し焦った様子で現れて足を止める。
「君のお迎えが来たようだ。返すつもりはないがね」
ベランダにいる私を見つけ、早足で近づいてきた。
私を捕まえようとする彼に向かって声を張り上げた。
「来ないで！これ以上近づいたらここから飛び降りるわよ。私が死んだら困るでしょう？私はあなたの恩人の孫娘だもの」
「馬鹿な真似はよせ。こっちにこい！」
ラドクリフが距離を詰めてきたので、塀に足をかけた。
「来ないでって言ったでしょう！」
眼下の川を見て、思わず怯む。
結構高さがある。
十メートルくらいあるんじゃない？
「本気で飛び降りるつもりか？」
ラドクリフが怖じ気づく私を見てニヤリとしながら私を背後から掴んで塀から下ろす。
「キャッ！」と声をあげてよろめく私をしっかりと掴み、私の喉元にナイフを突きつけた。