花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません

「俺からもじいちゃんを説得するから、神宮司と縁を切るとか考えるなよ」
「……約束はできない」
今は祖父の顔も見たくなかった。
浩ちゃんに車に乗せられ、マンションまで送ってもらう。
シートベルトを外して車を降りようとしたら、浩ちゃんに「花音、傘忘れてる」と声をかけられた。
「ああ」
小声で返事をして傘を手にする。
もう雨は止んでいるが、私の心の中は土砂降りの雨が降っている。
「じゃあ」
従兄にそう言って車を降りると、彼はショックから立ち直っていない私を気遣うように言った。
「さっきも言ったが、俺と親父でじいちゃん止めるから、自棄になるなよ」
コクッと頷いたが一二三に就職した時のように祖父が妥協するとは思えなかった。
なぜなら母という前例がある。
鍵を開けて部屋に入ると、玄関に岡本さんの傘を置いた。
私の将来が不安だから祖父は干渉してくる。
ギュッと唇を噛み締めながら玄関を上がると、リビングに行ってソファに突っ伏した。