花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません

「論文が全然進まないんです」
パソコン画面から顔を上げてそんな泣き言を言ったら、一之瀬さんがポンと私の肩を叩いた。
「だったら今日は帰ったら？気分転換も必要だよ」
「そうですね。きっと一時間ここにいても進まない気がします」
「なんなら今晩付き合おうか？」
一之瀬さんがセクシーボイスで囁いてきて、思わず笑ってしまった。
「大丈夫です。一之瀬さんだって忙しいでしょう？午後七時からイギリスのラボとオンライン会議ありますよね？」
私が指摘すると彼は少し拗ねた。
「藤森さん、釣れないなあ。少しは乗ってよ」
「だって、一之瀬さん、目が本気じゃないですもん」
フフッと笑ったら、彼が急に表情を変えた。
「ご要望とあらば本気で口説くけど？」
カッコよくて色気もあるが、少しもドキッとしない。
一之瀬さんは男性としてすごく素敵な人だと思うけれど、私にとっては観賞用。
アイドルみたいに目で見て楽しむことはあっても恋愛対象にはならない。