花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません
かといって、同僚は同僚としか思えないし……。
ピンとくる人がいないのだ。
「紹介されなくてもみんな知ってますから。ほら、もうオンライン会議の時間迫ってますよ」
明るく笑って目の前にある掛け時計を指差すと、彼は「あっ、ヤバい」と言って慌てて隣の部長室に入っていく。
一之瀬さんの姿が見えなくなると、パソコンの電源を落としてデスクの上を片付けた。
オフィスにある私の席は部長室の隣にあって、一之瀬さんとさっきのような雑談をすることがよくある。
無駄話というより、一之瀬さん流のコミュニケーションなのだろう。
彼はこういう会話で普段ラボに籠もっている研究員の状態を把握するのだと思う。
疲れている時はさっきみたいに帰るように言われるしね。
創薬研究部には部長を含め三十人の研究員が在籍している。
オフィスのデスクは各プロジェクトチーム毎にまとまっていて、私のいる島には五人の研究員がいる。
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