花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません
ふわりと香るスミレのような甘い香り。
顔を見なくてもその人が誰かわかった。
「岡本さん?」
咄嗟に彼を抱き留めて固まる。
「眠い……」
ボソッと呟く彼に、「岡本さん、起きてください」と声をかけるが、目を開けてくれない。
「岡本さん、寝るなら家で寝てください」
「……もう家だよ」
いつもよりなんだか子供っぽい声が返ってくる。
「だから、まだ家じゃないですよ」
彼にはっきり言っても、その目は閉じたまま。
どうするのこれ?
明日から四月とはいえ、まだ寒い。
ここに放置するわけにはいかない。
「ああ、お願いですから歩いてください」
体勢を変え、彼に肩を貸して自分の部屋まで連れていく。
なんとかリビングのソファまで運ぶが、私だけかなり息切れしていた。
どうしてこんなことになったのか。
生まれて初めて男の人をお持ち帰りしてしまった。
それにしても岡本さんもこのマンションなの?
しかも、同じフロア?
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