花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません
『ちょっと待って岡本さん!ここで寝ないでください!』
『……蓮だよ』
『岡本さんでも蓮でもなんでもいいから起きて……!』
そんなやり取りをしたっけ。
それに彼女を抱きしめて眠ったような気がする。
あったかくて、とても心地よくて、人の家なのにぐっすり寝てしまった。
そばにあるテーブルには、俺のメガネ、おにぎり、胃薬、それとメモが置かれていた。
メモを手に取ると、【もしよかったら食べてください。味の保証はしません】と書かれていた。
味の保証ができないから胃薬があるのだろうか?
一二三の胃薬というところに愛社精神を感じる。
「つくづく藤森花音は面白い」
胃薬を見てフッと笑みを浮かべる。
つい最近まで彼女のことは同じチームの研究員という認識しかなかった。
職場での彼女の評判はいい。
しっかり者で、優しく、仕事もテキパキやる。
そんな彼女に憧れる研究員も結構いるが、俺は全く関心がなかった。
俺の研究の邪魔さえしないでくれたらそれでいい。
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