花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません
そう思っていた。
母親のことや学生時代女の子にしつこく付きまとわれたこともあって女性には関わりたくなかったのだ。
だが、彼女に傘を貸した日、俺に意見してきて見方が変わった。
『岡本さんもあまり無理して残業しないでくださいね』
まるで学校の風紀員のように注意してきて驚いた。今まで俺にそんな風に言う人間は身内以外では誰もいなかったのだ。
研究所では人と話すことは研究以外ではなるべく避けていたし、普通なら長身で目立つ外見をメガネとワンサイズ大きい服で野暮ったく見せて目立たないようにしていた。
なぜなら創業者の一族と思われるのが嫌だったから。
先月の初めまでは俺の義理の兄である透が一二三の社長をしていた。
だが、義兄が交通事故で亡くなり、俺が新しい社長になった。
養父母も俺が大学四年の時に交通事故で他界している。
社長に就任して二足のわらじ生活が始まり、体力的にも限界を感じていた。
この一週間の平均睡眠時間は二時間。
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