花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません

ニパッと人懐っこい笑みを浮かべながら近づいてきたのは、私の一年後輩の田辺歩。
赤髪の短髪、耳にはピアスをしていて一見不良のように見えるが、明るくて優しい性格。
「ラーメンか。どうしようかな。最近疲れが溜まってるから家でゆっくり休もうと思って……あっ、電話」
バッグに入れておいたスマホのバイブ音がして、スマホを掴んで画面を確認したら、【神宮司浩介】と表示されていて思わず顔をしかめた。
それは六歳上の従兄からの着信。
悪い予感しかしない。
出ずにバッグにスマホを戻そうとするが、誤って応答ボタンに触れてしまった。
ああっ、マズイ！このまま切ってもまたかけてくるだろうな。どうする？
慌てていると、スマホから従兄の声がした。
《花音、仕事終わったんだろ？晩飯付き合え》
「浩ちゃん、今日はちょっと忙しくて無理かなあ」
仕方なく電話に出て曖昧に答えるが、従兄は諦めない。
《本当に忙しいなら俺の電話に出ないだろ？》