花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません

彼女の向かい側にある俺の席に目をやると、傘と缶コーヒーが置かれていた。
【傘、ありがとうございました。コーヒーよかったら飲んでください。藤森】というメモも一緒にあって、それを見て温かい気持ちになる。
傘を貸しただけなのに律儀な子だな。
自然と笑みが浮かぶのはなぜだろう。
自席に座って早速もらった缶コーヒーを飲みながらメールをチェックしていると、田辺がやってきた。
すぐに自分の席に座らず、藤森さんの席の前で立ち止まる。
『藤森さん、そんなに瞬きしてどうしたんすか？』
『あっ、田辺君、おはよう。ちょっと寝不足でね』
明るい声のトーンで彼女がそんな説明をしたが、やはり田辺も栄養ドリンクが気になったようで……。
『ああ、だから栄養ドリンク。でも、藤森さんに栄養ドリンク似合わないすね。俺は毎日飲んでますけど』
『田辺君、栄養ドリンクは化学薬品の寄せ集めなんだよ。毎日飲んじゃだめだよ』
俺の受け売り……。