花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません
藤森さんが作ってくれたのなら食べてみようかと思った。
もう俺はすでに彼女のテリトリーにいるし、彼女に触れても不快になんて思わない。
本人はもう出勤していないが「いただきます」と手を合わせ、おにぎりを口に運ぶ。
中の具はシャケで、冷えてはいたが程よく塩味が効いていて美味しかった。
一緒についていた玉子焼きも出汁の味が絶妙で美味しく、もっと欲しくなった。
全部食べ終わると、テーブルにあったメガネを胸ポケットに入れる。
このメガネは度が入っていない、いわば変装用メガネ。
素顔を見られた訳だが、藤森さんが俺の正体に気づいた様子はなかった。
一二三の社長が研究員をやってるいるなんて普通は思わないだろう。
キッチンへ皿を持っていき、彼女の部屋を出て鍵を締める。
「なんか見覚えある……って、うちの隣か」
驚いたことに彼女は俺のお隣さんだった。
出勤時間や帰宅時間が違うせいか今まで顔を合わせることはなかった。
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