花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません
義兄が社長になった時も祖母は義兄に同じことを言っていた。
「世の中には独身の社長だってたくさんいますよ」
一応反論するが、祖母は聞き入れない。
「まあIT業界は若くて独身の社長もいるでしょう。でもね、製薬会社というのは信用で成り立っているのよ。社長がいつまでも独身でいるのはよくないわ。このままの状態を続けるようなら、私が選んだ相手と結婚してもらいます」
「本気で言ってますか?だったら、社長なんて辞めますよ。別になりたくてなったわけではない。直也や他の従兄だっているのだから、好きに選んだらどうです?」
俺が揺さぶりをかけたが、祖母は動じなかった。
「なんだかんだ言ってもあなたは一二三を捨てられない。創業者である慶一郎の意志を受け継いでいるのはあなたなのだから」
慶一郎というのは、祖母の夫であり、俺の義理の祖父のこと。
一二三が発売した薬品の第一号は祖父が開発した風邪薬。これは今でも九条でトップスリーの薬品に入っている。
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