花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません

それはたまたま応答ボタンに触れたからですよ。
心の中でそう呟いて、「忙しいから無理だよ。また今度にして」と素っ気なく言葉を返す。
《その言い訳。三回連続で聞いた。たまには別の言い訳を考えたらどうだ？お前の会社の近くに車停めて待ってるから急いで来い》
従兄に一方的にブチッと電話を切られ、スマホを睨みつけた。
相変わらずの暴君ぶり。
「今日は一体なんなの？」
一カ月前に電話してきた時は、パーティの同伴を頼まれた。
私は断ったのに、無理矢理付き合わされたのだ。従兄にはノーと言っても通じない。
スマホに向かって文句を言うが、目の前に同僚がいたことに気づいてハッとした。
「花音さん、恋人に厳しいですね」
「花音先輩の彼氏ですか？」
ニヤニヤ顔で私を弄るマイクと田辺君に声を大にして言い返した。
「違います！ごめん、従兄から呼び出しがあって今日はいけない。また今度誘ってね」
バッグを持って小走りでオフィスを出る。