15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
「一千八百万!? 建て直しも同然だろ」
まさかの金額に、和輝も声が大きくなる。
「そうなの! でね? 平屋が流行ってるんですって、今。知ってた? 確かに、私たち二人じゃ二階に上がることもほとんどないし、車も手放したから、車庫を潰して家を広げたらって言われたの。段差をなくして、お風呂も座れるようにして? 台所の上の棚も手が届かないから要らないし」
見れば、見積りは一社しかない。
というか、雨漏りを直すだけのはずが、ゼロが一つ増えるほどの内容で見積りを出してもらうなんて、いいように流されているとしか思えない。
私は、見積りの会社名を検索した。
トップページに、和輝と同じ年くらいで、爽やかな笑顔でガッツポーズをした男性の写真がある。社長らしい。
どうやら最近代替わりをして、ホームページが開設されたようだ。
施工実績の写真は多くはないが、評判は悪くない。
「この社長さん、実物の方がいい感じのお兄さんだったわぁ」
お義母さん、まさか社長が好みだからこんな見積り取ったわけじゃないわよね……。
「雨漏りだけ見てもらうつもりだったのに、親切であちこち点検してくれて。そしたら、やっぱりあちこちガタがきてるみたいなの。それで、一つ一つ直すより、まとめての方が時間もお金もかからないって言ってくださって」
これだけ古い家ならば、あちこち痛んでいてもおかしくないが、だからと言って七十を過ぎた夫婦に一千八百万のリフォームなんて、どうしてできると思うのか。
今からローンが組めるとは思えない。
「母さん。そんな金、どこにあるんだよ」
「ローンを組むのよ? 少しは頭金で払うけど、残りは――」
「――年金暮らしの夫婦にこんな大金――」
「――共同名義にすればいいんですって」
共同名義……?
「この家の名義を、お父さんと和輝の共同名義にすれば、ローンが組めるんですって。そうしたら、お父さんが亡くなった後の名義変更も楽みたいよ?」
いやいやいや。
それって、お父さんが亡くなったら和輝が残債を払うんですよね!?
お義母さんは見るからにるんるんして、既にこの見積りの内容でリフォームする気満々のようだ。
「母さん。うちのローンもまだ半分以上残ってるのに、この家のローンまでは組めないよ。それに、俺の共同名義にしたら、佑に権利はなくなるんじゃないのか?」と、和輝が言った。
そうよ。
カタチのあるものを遺されて揉めると、大変だと聞く。
「佑は私たちの遺産なんて興味ないみたい。お父さんとお母さんの面倒を見るのはお兄ちゃんなんだから、だって」
ハッキリ言ったなぁ。
お義母さんは顔色を変えないけれど、それはつまり、自分たちは親の面倒は見ないと宣言したも同然だ。
わかっているのだろうか。
「面倒ったって、父さんも母さんも介護が必要なわけじゃないし、うちにはまだまだ手も金もかかる子供がいるんだぞ? 子供を作る気ないって稼ぎまくってる佑に援助してもらえよ」
和輝、珍しくいいこと言ってる!