15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
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「え――? 千恵が?」
日曜の朝。
まだベッドでゴロゴロしている時間に、母親から電話がかかってきた。
『そう。今朝、雪かきしてる時に千恵ちゃんのお母さんに会って、お母さんもびっくりしちゃった』
「で、大丈夫なの?」
『みたい』
「みたいって……」
隣のベッドで和輝がごそっと寝返りを打ち、私はそっとベッドを出てウォークインクローゼットに入った。
『連絡先、知ってるんでしょ?』
「うん。メッセージ、送ってみる」
『そうしたらいいよ。由輝と和葉は元気? 風邪ひいてない?』
「うん、元気」
『もうすぐ卒業式でしょ? お祝いしてあげたいから、そのうちおいで』
「うん、わかった」
話を終えてすぐ、私は幼馴染にメッセージを送った。
〈久し振り! 入院したって? 大丈夫なの?〉
千恵は幼馴染だ。
家が近所で、幼稚園から中学まで一緒だった。親しくなったのは小学三年くらいからだけれど、つかず離れずの関係で、大人になってからもこうしてメッセージのやり取りくらいはしている。
千恵は東京の大学に進み、そのまま就職、東京で会社を経営している十歳年上の男性と結婚した。
うちとは逆で、上が女の子、下が男の子。
確か、上の子が和葉と同じ年のはず。
握り締めたスマホが、ピロンッと鳴った。
〈T病院、来れる? 美味しいケーキ食べたい〉
まったく……。
東京にいるはずの千恵が帰って来て、入院していると知らされて驚いたが、元気そうだ。
〈了解! 昼頃、行く〉
〈五三五号室、待ってまーす!〉
クローゼットの中で着替えて、出る。
「電話?」
和輝がのそっと起き上がる。
「おはよう。起こした?」
「いや」
私と和輝のベッドの間にある、ローチェストの上の目覚まし時計を見る。
八時十二分。
「今日、ちょっと出かけてきていい?」
「どこに?」と聞きながら、和輝が両手を挙げて大きく伸びをする。
「友達のお見舞い」
「送ってく?」
「あー……、いや、自分で行く。車、使っていい?」
「うん」
起きて、子供たちを起こして、朝ご飯を食べて、私は掃除、和輝と由輝と和葉は雪かきをした。
お昼は適当に、カップ麺や冷凍パスタ、レンチンで食べられる味付き肉なんかを食べていて欲しいと頼み、私は家を出た。
昨夜の大雪のせいで、三十分ほどで着く病院まで一時間ちょっとかかった。途中でケーキも買ったからだ。
千恵の病室は、整形外科の個室だった。
ノックをして、返事があって、ドアを開けた。
「柚葉、久し振り!」
頭に包帯を巻いて、頬にガーゼを当てた姿の千恵が、笑う。
「どうしたの、その怪我」
数年振りに会ったというのに、挨拶もなく、私はため息をついた。
「階段から落ちた」
「はぁ? なにやってんの」