15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
「――諦めずにぶつかってたら、こうはならなかったのかな」
「どうだろうね……。でも――」
私も窓の外を見た。
目尻がヒリヒリする。
「――悪いのは千恵じゃない」
「……うん」
正解なんて、わからない。
けれど、千恵が悪いわけじゃないことは、確かだ。
それが彼女の励みになるかはわからないけれど。
「柚葉は? 幸せ?」
千恵が私に目を向けた。が、私は窓の外を見たまま。
きっと千恵も、親友のカサつく肌や皺の多い目尻なんかに年齢を感じていると思う。
「私も、後悔してる」
「え?」
「優柔不断な旦那に、ちゃんと決めさせてあげなかったこと」
「なにを?」
「本当に私と結婚していいのか――を」
友達に流されて付き合い始め、私に流されて付き合い続け、私の親に流されて和輝は私と結婚した。
ねぇ、和葉。
お父さんとお母さんにプロポーズの言葉はないんだよ?
「和輝は、元カノを忘れてなかったんじゃないのかって……今も思う」
「聞いたらいいよ」
「え?」
千恵を見た。千恵は、窓の外を見ていた。
「結婚して十五年だよ? 今更――」
「――これからの十五年の為に、聞いた方がいいんだよ」
千恵に、これからは、ない。
「聞けるうちに、聞いたらいいよ」
そうね。
私はまだ、聞ける。
「退院したら、飲もう」
「うん」
「その時、教えて」
「なにを?」
「旦那さんの答え」
「……う――」
「――ちゃんと聞いて、教えて」
『柚葉は、まだ間に合うんだから』
そう言われてる気がした。
「わかった」
家に帰ったら、酷い顔をしていると子供たちに笑われた。
和輝も笑っていたけど、何か言いたげだった。
いつもなら、私から話す。
涙の理由や、心配しなくていいことを。
けれど、今日は何も言わなかった。
言えなかった。
冷えたタオルを目に当ててベッドに横になる。
「私と結婚したこと、後悔していますか――?」
言葉にしたら、泣けてきた。
私はまだ、聞けそうにない。