ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!~10回殺され追放されたので、今世は自由気ままな人生を満喫してもいいですよね?~
プロローグ
ああ――またか。
 絶望に満ちた目で、シアは目の前に立つ人々を見る。
 父、エクスレイ伯爵。そして、母である伯爵夫人。妹――そして、婚約者。

「ヴィニーシア・エクスレイ。貴様、よくも今まで俺をだましてくれたものだな」

 婚約者であるジュスランの目が、憎々しげにシアを射抜く。
今までも、同じような光景を繰り返し目の当たりにしてきた。
 幾度も、幾度も――シアは十八の誕生日を迎えた。
 そして、十八になったその当日。
 シアの命は奪われ続けてきた。今、目の前にいる人達によって。

「お前は聖女だと言い、俺の婚約者の地位を勝ち取ったが、お前は聖女なんかじゃない」

 ――いいえ。
 心の中でつぶやく。返事の代わりに、婚約者の名を呼んだ。

「――ジュスラン様」

 そう呼びかけたら、相手は口角を下げた。はん、と馬鹿にしたような声が、ジュスランの口から漏れる。

「――ねえ、ヴィニーシア。あなた、最初からわかっていたのでしょう? 自分が、聖女などではないって。殿下の婚約者になりたかっただけなのでしょう?」

 諭すような母の声。それには返すことなく、シアは唇を引き結んだ。
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