ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!~10回殺され追放されたので、今世は自由気ままな人生を満喫してもいいですよね?~
「いや、俺もありがたいけどな。なかなか、こういう店に来る機会ってないし」

 エドが店内に視線を巡らせる。木製の家具を中心に調えられた店内は、花柄のカーテンやテーブルクロス等で可愛らしい雰囲気だ。女性客が多いのもわかる。

(……そう言ってくれるなら、少しは気が楽になるんだけど)

 ここまで室内装飾に気を配った店は、貴族街ならともかく、庶民の集まるこの地域では珍しいらしい。たしかに男性は、入りにくいかもしれない。

「料理もうまいし。アキも好きそうだ」

 幼馴染というだけあって、アキの好みも知り尽くしているようだ。彼の笑みに、周囲から密かなざわめきが聞こえてくるような気がする。

(もうちょっと、可愛い服を着てきたらよかったかなぁ……)

 自分の服を見下ろして、少しばかり後悔した。今のシアは白いブラウスに、古着屋で買った茶色のスカート。清潔感はあるが、おしゃれではない。そもそも、今までお洒落に気を配ろうなんて思ったこともないのに、どうして今日は気になるのだろう。
 どうしよう。ふと、思う。
 この時間が、もっと長く続けばいいのに。

 * * *



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