ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!~10回殺され追放されたので、今世は自由気ままな人生を満喫してもいいですよね?~
 まだ、シア自身も、そこまで心を決めているわけではないのだということに、改めて気付いてしまう。

「私が離宮でそっとしてもらっているのって、瘴気を祓うことはできても、それ以上のことはできない偽聖女だと思われているからでしょう。もし、力が本物だって知られたら」

 以前の人生と同じことになるような気がしてならない。
 聖女の祠に閉じ込められて、救いを求める人に力を与える日々。
 それはそれでやりがいのある日々だったけれど。反面、シアの人生をすべて犠牲にするものでもあった。
 ここに来て、自由を知ってしまった。
 自分が気に入った服を着て、おいしいものを食べて、ポーションを作って、街の人々とたわいもない会話をする。それだけのことが、こんなにも幸せなのだ。

(――まだ、恋は知らないけれど)

 エドのことはちょっぴりいいなと思っているが、それだけ。 会えば楽しい人だと思うが、彼と恋人になりたいとか考えてはいない。
 ――なれない、の方が正解だろう。
 もし、親しく交際するようなことになったら、シアの能力について語らざるを得ない。それは、賢くない選択肢のように思えた。

「――よし」

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