ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!~10回殺され追放されたので、今世は自由気ままな人生を満喫してもいいですよね?~
 だから、十一回目の人生は、家族に殺されることなく、隣国に嫁ぐ――こちらの国でも歓迎されたわけではないけれど――という形で国を去ることができた。あとは平和に穏やかに暮らしていくだけだと思っていたのに。

「ちょっと、聞いてるの?」
「え、ええ……」

 ジェルトルーデに声をかけられれば、どうしたって身体が強張る。

(……マルは!)

 マルは今、どこにいるだろう。家妖精の存在に気付かれたら、連れていかれるかもしれない。
 目につくところには、マルはいなかったのでほっとする。元家族が立ち去るまで、マルは身を潜めていた方がいい。

「……どうぞ」

 お入りください、と招くつもりもなかったけれど、入り口に立たせっぱなしにしていたら、まだまだ文句は続くだろう。
 不承不承、居間として使っている部屋に三人を招き入れた。

「まあまあ綺麗に片付けているのね。使用人達はちゃんとやっているようね。家具も上質のものだし……それなりの扱いはしているということかしら」

 母は、しきりに居間を見回していた。
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