ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!~10回殺され追放されたので、今世は自由気ままな人生を満喫してもいいですよね?~
 いい知らせって、なに? 伯爵の口からいい知らせと出てきて、本当にいい知らせだったことなど一度もない。思わず、背後に目を向ける。
 もしかしたら、背後にシアを処刑する人が立っているのではないかと思って。

「ヴィニーシア、どこを見ているんだ? 今、話をしているのは私なんだが」
「失礼いたしました」

 一瞬現実逃避をしていたら、すかさず伯爵はそれをとがめてくる。
 たしかに後ろを向いていたのは無礼なので、その点については謝罪した。

「あなたにとっても、いい知らせだと思うの」

 伯爵夫人がそう口にして、シアの警戒基準は、また一段と跳ね上がる。シアのことなんて、今まで一度も見向きもしなかったのに、今さらどういう了見だ。

「一緒に、国に戻りましょう。お姉様」

 お姉様? ジェルトルーデの口から出てきた言葉に、思わず眉を跳ね上げた。お姉様って、誰のことだ。
 いや、たしかにシアはジェルトルーデの姉であるが、あの国を離れた時、エクスレイ家は捨てた。ここにいるのは妹ではなく、妹だったひと、だ。

「――帰りません」

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