ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!~10回殺され追放されたので、今世は自由気ままな人生を満喫してもいいですよね?~
 口にしてから、少しばかり図々しいかもしれないと思い返した。家族がシアを取り戻しに来たと言うのなら、帰るべきなのかもしれない。
 だって、シアはここに居座っているだけ。
 王妃ではないのだから、エヴァンドロの厚意に甘えているだけなのだ。迎えに来たと言うのなら、彼らと共に帰るべきなのかもしれない――だけど。

「――そんなことを言わずに、一緒に帰りましょう。私達、あなたを手放したことを後悔しているの」

 伯爵夫人が、猫撫で声でシアを懐柔しようとする。シアは唇を引き結んだ。
 この人達、本気で後悔しているわけではないだろう。ただ、なんらかの事情でシアが必要になっただけ。きっと結界が壊れそうだとか、魔物の発生件数が増えただとかそんなところだろう。。

(あの国には……もう、戻りたくない……)

 あの祠で暮らしていた頃、シアは幸せとは言い難かった。
 シアに期待されていたのは、聖女としての役目を果たすこと。日々、祈りを捧げ、結界を維持し、瘴気が発生すればそれを浄化する。
 瘴気を浄化する度に、少しずつ、身体に呪いの色をため込みながら。
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