ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!~10回殺され追放されたので、今世は自由気ままな人生を満喫してもいいですよね?~
 たしかにシアに声をかけてくる貴族は多くなったけれど、街で暮らしたいというシアの意をくんでくれる人が大半で、それでもしつこい人達はベラが追い払ってくれた。それに、たぶん、裏でエヴァンドロも貴族達を抑えてくれている。

(――この国の人達は、私を私として見てくれる)

 聖女ではなく、シア。
 シアの作るポーションは、たしかにとても効果が高い。
 だからこそ、順番を譲り合って、欲しい人の手に渡るようにしている。
 これが、この国の人達のシアに対する態度だ。シアの望まないことはしない――ごく当たり前のことのはずなのに、母国にいた頃は、それも許されなかった。

「――そんなことが、許されると思っているのか!」

 伯爵が、声を荒げた。許されるもなにも、最初からシアはこの人達の家族ではなかったというのに。

「……帰りません」

 負けないよう、しっかりと顔を上げて言い放つ。シアの居場所は、あの国にはなかった。
 ここだって仮の居場所でしかないけれど、少なくともこの国の人達はシアがここにいることを許してくれる。ここにいてもいいのだ――まだ、しばらくの間は。

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