ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!~10回殺され追放されたので、今世は自由気ままな人生を満喫してもいいですよね?~
「話は終わりました。お帰りください」

 それだけを言い放ち、玄関ホールに続く扉を開く。見送りはしないが、かまわないだろう。
 とにかく、彼らの前から離れたかった。
 きっぱりと断れば、おとなしく出ていってくれると思っていたのに、彼らの行動はシアの予想を大きく裏切った。

「――しかたないな」

 ため息をついた伯爵が、シアの腕を掴む。

「やめて! 離して!」

 今まで伯爵が、シアに向かって暴力をふるったことなど一度もなかった。そもそも、暴力をふるうほどの興味をシアに持っていなかったから。
 なのに、今は違う。爪が食い込むほどに強くシアの腕を握りしめ、もう片方の手で、シアの頬を叩いた。
 ジンとした痛みが広がり、思わず目に涙が浮かぶ。

「離してって言ってるでしょ!」

 腕を振りほどこうとするものの、男の力は強い。抵抗むなしく、そのままずるずると玄関ホールに引きずり出されてしまった。

「行かないってば! 私は、ここにいるんだってば!」
「エヴァンドロ陛下は、お前を連れて戻っていいとおっしゃっていたぞ」

 父の言葉に、ばたばたとさせていたシアの手足から力が抜けた。

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