ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!~10回殺され追放されたので、今世は自由気ままな人生を満喫してもいいですよね?~
 けれど、いざ結婚相手と対峙してみれば、相手はシアなんてまったく必要としていなかった。シアの独りよがりだったわけである。

「――だが、彼女はここで静かに暮らしたいと言っている。それに、俺は彼女に恩義があるんでな。彼女がここにいたいと言うのであれば、無理に帰すつもりはない」

 ぱっと顔を上げる。今、耳にした言葉は、本当だろうか。ここにいたいとシアが望むのなら、エヴァンドロはシアを追い出さないだろうか。

「――大丈夫だ」

 肩越しにこちらを振り返り、彼は優しく微笑んだ。

(……やっぱり)

 その微笑みは、シアがよく知るもの。でも、信じられない――本当に?

「――お前達は、俺を軽んじているようだが――お前達をここから追い出すくらいのことはできるんだぞ」
「い、痛いっ、やめろっ、離せっ!」

 今度痛みに呻いたのは伯爵であった。エヴァンドロはそのまま伯爵の腕を掴んでずるずると引きずり、玄関ホールから外に放り出した。
 無様に尻餅をついたとたん、激しい水しぶきが上がる。朝から降り続いていた激しい雨で、外は沼のようにぬかるんでいた。

「お前達も、放り出してやろうか?」
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