ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!~10回殺され追放されたので、今世は自由気ままな人生を満喫してもいいですよね?~
「陛下の呪いの根源をずっと探ってたんですけど」
「……どうやって?」
「どうやってって……私、一応聖女ですよ?」

 エドの前では聖女らしからぬ言動が多かったから、忘れていてもしかたないのかもしれないが。

(――なんだかなぁ)

 と、思わず心の中でつぶやいた。エドの方も自分の失言に気付いたらしく、微妙な表情になった。

「そうだな、あなたは聖女だ」

 聖女、と呼ばれて、エドとの距離があいたような気がするのだから、複雑なものだ。けれど、それはシアの勝手だろう。一応聖女と言ったのはシアなのだし。

「その呼び方はやめてください。私は――シア、ですから。ただ、シアと呼んでいただければ十分です」

 聖女、と呼ばれていた頃には、あまりいい思い出はない。家族に殺されることに怯えた日々を過ごしていたから。

「呪いの根源を見つけ出したので、浄化したいんですよ」

 ヴィニーシアという本当の名も、聖女としての立場も、シアには不要だ。
 今は、ただのシア。ポーション職人で、リスヴェンでの生活を楽しんでいる。それで十分。

「――それはありがたいのだが。あなたの身体は大丈夫なのか」

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