ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!~10回殺され追放されたので、今世は自由気ままな人生を満喫してもいいですよね?~
 相手はエド、というだけではなくて国王であることも忘れてはならない。
 右足を後ろに引き、相手への敬意を込めて頭を下げる。
 顔を上げたシアは、くるりと向きを変えた。そのまま、元来た道を戻っていく。
 背中に、エドの視線が突き刺さっているような気がした。

 * * *



(……俺は、なにを考えているんだ)

 彼女の後ろ姿を見送りながら、心の中でつぶやいた。
 限られた人間しか側に寄せなかったのは、さほど遠くない未来、呪いで命を落とすと思っていたから。
 余計な権力争いを招かないためにも妻帯せず、王の地位は異母弟に譲るのがいいと思っていた。
 ――それなのに。
 シアに引き付けられる。目を離すことができない。
 いや、もっと彼女の笑顔を見たいと思ってしまう。最初に突き放したのは、エドの方だというのに。

「……お前、気付いてたか?」

 ヨアキムに聞くと、彼は首を横に振った。
 ヴィニーシアとシアが同一人物だなんて、ふたり揃って気付いていなかった。まあ、ヨアキムの方はそもそもヴィニーシアもシアも視界に入れないようにしていたわけであるが。
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