ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!~10回殺され追放されたので、今世は自由気ままな人生を満喫してもいいですよね?~
 馬なら八時間かかるところを半分に縮めて到着した一行に、国境の地フェルネスの領主は驚いたようだった。

「陛下――まさか、陛下自らこんなに早くおいでいただけるとは」

 髪を染めていても、エドが国王であることは見抜かれてしまったらしい。ヨアキムはじめ、ついてきた冒険者や兵士達も驚いた様子は見せていなかったから、エドの正体がエヴァンドロであることを知っている人は意外と多いのかもしれない。

「俺にできることをするしかないだろう。こちらは、セアルド王国から我が国に協力するためにやってきてくれた聖女――ええと」

 ヴィニーシアと紹介すればいいのか、シアと紹介すればいいのか。エドとしては困ったようだった。彼が言葉に詰まったところで、シアが続きを引き取る。

「――シアと申します。わたくしでお力になれればよいのですが」

 身に着けているのは簡素な服装であっても、長年の間聖女としてやってきた所作まで忘れたわけではない。そもそも、聖女の祠に行くまでは貴族の娘だったし、一応王太子の婚約者でもあったので、マナーは厳しく叩き込まれた。
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