ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!~10回殺され追放されたので、今世は自由気ままな人生を満喫してもいいですよね?~
 魔物ならば、このまま殲滅してしまえばいい。そう思っていたのだけれど――。魔力を放出すべく、振り上げかけた手を下ろしてしまう。

「どうした? このまま下りて、俺が切ればいいんだろう?」
「――だめです」
「だめって?」

 背後から、疑問の声が飛んでくる。瘴気がガラティア王国に向かってきているというのに、シアが止める理由がわからないのだろう。

「――あれ、人間です……たぶん」

 最後にたぶんと付け足してしまうあたり、自信がないのがバレバレだ。「人間?」と背後から、いぶかしむ声が聞こえてきた。

「人間なんですよ! あの瘴気を発生させているの……たぶん、たぶん、ですけど魔力を瘴気に変えているんじゃないかな……」

 あくまでもシアの勘、でしかないけれど。あそこで蠢いているものの魔力の流れがおかしいのだ。

「――そんな。嘘だろ。そんなことができるのか?」
「やってやれないことはないんでしょうね! 本人がやっているのか、誰かにやらされているのかはわからないですけど……もう少し、近づくことはできますか?」
「……任せろ」

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