ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!~10回殺され追放されたので、今世は自由気ままな人生を満喫してもいいですよね?~
 シアは殺され続けてきたし、逃れようとあがいてきた。
 家族との仲を良好にできるよう、必死の努力をしてみたり、神殿の偉い人に助けを求めてみたり。時には、この祠から逃げ出し、他の国に身を潜めたこともあった。
 ――けれど、それはいつも無駄な努力。
 最後には殺される。十八の誕生日、家族か、家族が送り込んだ暗殺者の手によって。
 なのに、今回は、この国からの追放だけですむらしい。家族――いや、もう元家族と言った方がいいだろうか。彼らから離れることができる。
 なんでという疑問は消えないが、今はとりあえず死を免れたことに安堵した。

(ガラティア王国の王……エヴァンドロ陛下)

 胸に手を当て、新たな婚約者の名をそっと呼んでみる。相手がどんな人かはよく知らないけれど、きっと悪いようにはしないだろう。
 いや、シアを殺そうとし続けてきた家族や、元婚約者と比べたら誰だってはるかにいい人に違いない。
 十一回目の人生、今までできなかったことをやってみよう。エヴァンドロとなら、きっといい関係を築くことができる。
 この時のシアは、無邪気にそう信じ込んでいた。
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