ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!~10回殺され追放されたので、今世は自由気ままな人生を満喫してもいいですよね?~
 もともとヴィニーシアは聖女の祠で暮らしていて、家族と会うのも月に一度か二度という程度だったからだ。
 彼女がガラティア王国に行ったところで、ジェルトルーデの生活はなにひとつ変わらない。

「まさか、私が聖女になるなんてね」

 ヴィニーシアが聖女に選ばれたのは六年前。瘴気を浄化する能力があると言って、聖女の祠で暮らすようになった。
 彼女が家を出ていった日のことを、ジェルトルーデは今でも覚えている。
 真っ白な衣に身を包んだヴィニーシアは誇らしげな笑みを浮かべて、両親に頭を下げて出て行った。

(あの時、私が聖女として目覚めていれば……!)

 覚えたのは、どうしようもない苛立ちと嫉妬。
 聖女として目覚めたからという理由で、ヴィニーシアが王太子ジュスランの婚約者になったのもまたジェルトルーデの嫉妬心を煽った。
 ――けれど。
 いつの日からか、ヴィニーシアに対する評価は、変化していった。瘴気を浄化する能力はたしかに持っていたけれど、瘴気を浄化する度に黒く染まっていく髪、そして黒く染まっていく瞳。
 エクスレイ伯爵家は皆、銀の髪に青い瞳を持つというのに、姉だけは黒に染まっていった。
< 78 / 286 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop