ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!~10回殺され追放されたので、今世は自由気ままな人生を満喫してもいいですよね?~
 ――呪われた聖女。
 ヴィニーシアがそう呼ばれるようになるまで、さほど長い年月はかからなかった。
 黒は瘴気の色、そして魔の色。魔に染まる聖女を輩出したエクスレイ家は、周囲から白い目で見られるようになった。
 その流れが変わったのはひと月前だ。ジェルトルーデにも、瘴気を浄化することのできる能力が芽生えた。それだけではない。ジェルトルーデは瘴気を浄化しても、髪も目も染まらなかったのだ。
 新たな聖女。真の聖女。
 目障りだった姉がいなくなっただけではない。ジェルトルーデが真の聖女として目覚めたことで、エクスレイ伯爵家の名誉は回復された。
 ジェルトルーデは、聖女の祠で暮らす必要もない。王太子の婚約者として、王宮に一室を与えられたからだ。
 贅沢なドレス、美しい宝石、優しい恋人。そして、その恋人は、この国最高の男性だ。ジェルトルーデは、今まさに幸福の絶頂にあった。

「私は、だまされていたのだな――」

 王宮の庭園を並んで散歩しながらジュスランは、悲痛な顔でそう口にする。偽物の聖女のくせに、王太子の婚約者になるなんて許せない。

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