ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!~10回殺され追放されたので、今世は自由気ままな人生を満喫してもいいですよね?~
 収穫したばかりのトマトとキュウリを半分、ポーションの納品時に使う籠に移動させる。
 今日はベラの店に納品に行くことになっている。ついでだから、これは彼女におすそ分けだ。ご近所付き合い、大事。

「マルも一緒に来る?」
「行く!」

 マルは、シアの飼っているハムスターという扱いで、ベラの店に出入りしていた。当然店にいる間は、羽根は隠すし、会話もしない。
 白くてふわふわでもこもこで可愛い、と店にやってくるお客さん達にも好評である。時々、いかつい冒険者が目を細めて撫でているのは微笑ましい光景だ。
 朝食を終えると、シアは裏の井戸から水を汲んでくる。中身を綺麗に洗ったポーション瓶に注ぎ分けると蓋をした。

「えーい」

 ひらひらと手を振ったら、眩い光がポーションに吸い込まれていく。
 これで、ポーション製作完了。
 日差し避けの大きな帽子に、籠いっぱいのポーションと野菜。肩にマルを乗せて離宮を抜け出した。

(というか、ものすごく贅沢な暮らしよねえ……)

 歩きながら、しみじみとした。
 家族に殺されずに追放されるというのは、過去十回の巻き戻りの中では見ないパターンだった。十一回目の今回も、家族に絶対殺されるものだと思っていた。
 でなかったら、婚約者のジュスランに殺されていた。
 でも、追放された今は、家族の存在なんて完璧に忘れている。シアのことは、向こうも忘れてくれればいい。
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