ポケットの中のおもいで


「部分的にとれないから,魔法かけたら,薫は全部忘れちゃう。私の事忘れるなんて嫌だ。初めて遊んだ女の子なのに」



喋れば喋る程泣きそうな顔になる海月。

私はそんな海月に



「大丈夫だよ」



と言った。



「私,お母さんにも,友達にも,これから出会う人にも,誰にも言わない」

「でも…いいの? どうして……」

「だって……友達,でしょ?」



口にだすのはまだ,恥ずかしいけど。



「うん,うん! ありがとう」



結局泣き出してしまった海月は,みるみるうちに姿を変える。



「ぐすっ…薫,変だと思う?」

「ううん…すごい。きれい……」


ほんとに,人魚だったの?

私の前には,宝石みたいにきらきら光る,尾びれ。

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