ポケットの中のおもいで
「ありがとう。忘れないでいてくれて。また名前を呼んでくれて。でも,今日はもういかなくちゃ。お姉ちゃんが呼んでる。すごく,すごく嬉しかった!!!」



涙と共に紡がれる言葉。

そんなの,私だって……!

私は代わりに,ぽっけを叩いた。

海月が目を丸くする。



「まだ,持ってたの。まだ小2だったのに……」



ふわりと笑うその顔が,すごく綺麗。

確かに,まだ小さかった。

沢山物も無くした。

だけど,これだけは絶対に失くさなかった。

あの日と同じ言葉をもう一度。



「また,逢える?」

「うん,きっと」



海月は泣き笑いを浮かべる。

私もきっと,同じような顔をしているだろう。

ほんとに,海月は全部覚えてるんだ。

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