あなたとわたしで紡ぐ愛
「ふはっ!佐和さんの渓くんのあしらい方、相変わらず最高です」
「もうお手のもんよっ。たまには私にも翠ちゃん一人占めさせなさいよって話よね!」
綺麗なストレートロングの黒髪に目鼻立ちのクッキリした顔立ち。見た目は大和撫子を体現したような彼女だけれど、性格はなかなかに豪快。
そんな彼女との出会いは、12年前。
お兄ちゃんが就職してすぐ、私が10歳の夏にお母さんが亡くなって。
それまでは割とお転婆で、通信簿にも毎回活発で明るい子、と書かれるような子供だった私が、すっかり元気をなくし塞ぎ込んでしまった時期があった。
そんな私を心配したお兄ちゃんが会わせてくれたのが、渓くんと佐和さん。
閉じこもりがちだった私を休みの日にはみんなで遊園地や水族館に連れ出してくれたり、その当時からあの平屋に1人で住んでいた渓くんの家の庭でバーベキューをしようと誘ってくれたり。(これは家主を差し置いて、お兄ちゃんが勝手に企画した)
そうしてみんなのおかげで少しずつ少しずつ元の元気を取り戻していった私は、気がつけばお兄ちゃんが拗ねちゃうくらい、すっかりこの2人に懐いていた。